Uのあたまのなか

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澤村伊智先生の描き下ろし短編「くらいところ」を読んでみた

サクッと読めてズシッと残る短編

WEBジェイ・ノベルに澤村伊智先生の短編が掲載された。タイトルは「くらいところ」だ。著者本人がツイートしているように、とあるキャバ嬢に関する関係者の証言をルポライター目線で綴った物語。

ページ数にして37Pという気軽に読める短編なので、早速読んでみた。


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物語は証言のみで展開されていく

この短編の特徴として、インタビューしているルポライターのセリフは一切出てこない。発言自体は登場するが、それも関係者の聞き返しやオウム返しという手法で語られるのだ。AVの序盤によくあるインタビューシーンを観ているときに近い感覚になったので、ひょっとしたらそれを意識したのか?と一瞬思った。状況説明は一切ないので、読み始めは一体「誰のことを」「誰に」「なんの目的で」「誰が」という部分が気になりまんまと引き込まれた。

ある人物に関する3人の証言から徐々に全貌が見えてくるのだが、物語が進めば進むほど、かえって捉えようのない不思議な感覚に陥る。これは読んでみないと味わうことのできない感覚だと思うが、捉えきれないのはもしかしたらなにか見落としている描写があるからではないか、という不安にかられ、何度も読み返したくなる。

澤村伊智先生やっぱ好きだわ~

この短編「くらいところ」を読んで改めて実感したのは、私は澤村伊智先生の文章や構成、雰囲気が好きだということ。作者補正で作品の評価が甘くなっているのは事実だろう。しかし好きな文章、作家にめぐりあうというのはそう多いことではないのだから、この出会いに感謝して、この先も澤村伊智先生の生み出す作品に身を任せる他ない。今月発売される予定の比嘉姉妹シリーズ最新作「などらきの首」も楽しみで仕方がない。もちろん発売日当日に購入予定だ。

30分もあれば読み切れるのでぜひ!

ダイレクトに紹介することになるが、私のどうしようもないレビューで少しでも興味を持った奇特な方がいるのなら、ぜひ読んでみてほしい。私なんかが紹介せずとも、澤村伊智先生の知名度からいって小説好きな方であれば読むであろうと踏んでいる。ホラーでもありミステリアスでもある本作は面白い。