Uのあたまのなか

おっさんです。思ったことや感じたことを吐き出す場所としてブログを立ち上げました。

落語はいいものだ。立川志の輔の「みどりの窓口」で私は一気に惹き込まれた。

落語との出会い

落語といえばじいさんが聴くもの、そんな固定概念があった。アラサーではあるがまだ自分自身のことをおじさんと認めることができていない私にとって、落語はまだ手をつけるには早いものだったのだ。しかし、なにがどうしたものかいつのまにか落語に興味を持ち始めていたのである。

ここ数年、私は日本や地元山梨に対して愛着に近い感情がじわじわと大きくなってきている。一種のホームシックなのかなんなのかわかっていないが、そうした気持ちによって将棋だったり落語だったり相撲だったりと、日本古来の文化への興味が高まりつつある。それが高じて落語を深く知りたいという衝動に駆られたのだろう。


とはいえ、まったく落語家を知らない私はまず誰の何を聴いたらいいのか迷った。そこで思い当たったのが「立川談志」だ。詳しくは知らないが、名前は聞いたことがある。偏屈な爺さんというイメージだった。そんな曲者の落語だったら面白いのかもしれない、ということでまずは立川談志ドキュメンタリー映画を観ることにしたのだ。

落語でこんなにも笑えるのかと衝撃を受ける

私は早速Huluで配信されていた「映画 立川談志 ディレクターズ・カット」を観てみることにした。いまだに途中までしか観ていないのだが、この映画の中に出てくる「やかん」という噺で衝撃を受けた。知らないことはないと豪語する隠居が、八五郎という男が繰り出す質問にあれこれ屁理屈のように答えていく、というのがあらすじだが、これが非常に面白い。

隠居が答えるテンポと言い切りの良さと、その答える内容がくだらないようで的を得ているためツボにハマり、声を上げて笑った。落語はクスクス笑うくらいのものだろうとたかをくくっていた私にとって目から鱗だった。こんなに面白いものなのか、素直にそう感じた私は、その時点で落語に魅了されていたのだった。

立川志の輔創作落語みどりの窓口」で爆笑できることを知る

立川談志で衝撃を受けた私は、次に立川志の輔の噺を聴くことにした。立川談志の弟子であり、NHKガッテン!の司会者でもあり、ペヤングの人でもあるという浅い知識からの選択だった。それに、関西出身ではないので上方落語(関西の落語)の場合は関西弁がすんなり耳に入ってこないため、標準語である江戸落語が良かったというのもある。

YouTubeで検索して出てきたのが「みどりの窓口」という噺だった。名前的には昔の話ではなさそうと思い、聴いてみることにした。そしてまんまと爆笑することになる。

駅にあるみどりの窓口を舞台に、窓口のスタッフと訪れるお客さんとのやり取りで展開されていく噺なのだが、これが最高に面白い。お客さんの理不尽さが実際にいそうな感じがして引き込まれるし、それを受けるスタッフの苦悩がまた面白い。まさか落語で爆笑する日が来るなんて思いもしなかったので、この新たな発見がとても嬉しかった。

噺自体も面白いが、私が聴いた「みどりの窓口」のマクラがまた面白かったのだ。マクラというのは噺の前にする前フリのようなもので、落語はマクラ→本題→サゲ(オチ)という構成なのでまずはじめにする噺のことである。立川志の輔が、10年近く毎年選挙の速報番組を楽しみにしているが、最近は趣がないというようなことを話すのだがこの語り口が抜群に面白いのだ。

立川志の輔の魅力

正直私は今の時点で立川志の輔のごく一部しか知らない。すべての噺を聞いたわけではないのでにわかもいいところなのだが、そんな状態でもたしかに感じる魅力がある。

まずは声。しゃがれた感じの声が非常にいい味を出している。とても聞きやすいし、なんだか安心感すらあるのだ。あくまでも私の主観なので個人差はあると思うが。

続いて話し方。もちろん噺の本題では登場人物を演じるので素の状態とは違うのだろうが、演じている状態も素の状態もどちらもスッと入ってくる話し方なのだ。憎めない話し方という表現が近いと思う。

落語には、昔から様々な落語家が演じてきている「古典落語」とオリジナルで作成する「創作落語」があるのだが、どちらもクオリティが高いというのも魅力のひとつだ。「みどりの窓口」は立川志の輔の代表的な創作落語である。

立川志の輔のおすすめ噺その1「徂徠豆腐」

この人情噺で私は涙を流した。立川志の輔が演じるもので最も好きな噺だ。貧困を極めている学者とお豆腐屋さんの交流を描いた噺なのだが、これがまた泣けるんだ。少し長い噺だが、ぜひ最後まで聴いてみてほしい。後半、徂徠が豆腐屋に語りかける場面がとくに秀逸。

立川志の輔のおすすめ噺その2「こぶとりじいさん

これは創作落語。マイケルという知り合いの外国人に「数ある昔話の中でこぶ取り爺さんだけ何が言いたいのかわからない」という疑問をぶつけられた主人公が、こぶ取り爺さんに秘められた教訓を説明しようとするのだが…というあらすじ。これがとにかくコミカルで面白い。聴けば聴くほどこぶ取り爺さんはどういう意味がある昔話なのか、自分でもわからなくなってきてしまう。娘や妻があれこれ言ってくる様がまたたまらない。非常にとっつきやすいタイプの噺だと思う。

知れば知るほど深い落語の海を泳いでいきたい

私は古い歴史を持つ落語に対してまだまだにわかだ。まだ聴いたことのない噺はごまんとあるし、落語家についても全然知識が浅い。だからこそ、焦らずじっくりと徐々に理解を深めていきたいと思う。そして寄席などに足を運んで生の落語に触れていきたいのだ。

月亭方正の落語を生まで聴いたがやっぱり良かった。となると、立川志の輔が健在のうちに一度だけでも生で聴きたいと思うが、屈指の人気落語家であるからなかなかチケットが取れない。これまでに何度も落選している。だが諦めるつもりはない。手遅れになる前に立川志の輔の落語を生で聴けるその時を楽しみにしている。