Uのあたまのなか

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映画「恋は雨上がりのように」をただのおっさんと女子高生の恋愛物語と思ってない?

あらすじで敬遠するのはもったいない

映画「恋は雨上がりのように」は近年ではかなり秀逸な邦画作品だと個人的に思ってる。ただ、あらすじだけで内容を判断している人も一定数いることは事実であろう。


女子高校生がバイト先の45歳のファミレス店長に恋をする、これだけだとよくある恋愛漫画を単純に実写化しただけのキラキラ系作品と遜色がない。しかし、実際の本編はそれだけでは終わらない素晴らしい作品に仕上がっているのだ。というか、そもそもにして原作がただの恋愛漫画ではないのだ。

あらすじだけで内容を判断して「気持ち悪いおっさんの妄想だから、現実で期待すんな」のような主張をしている人たちがツイッターでも散見された。言い分はわかる。FPSゲームに影響されて銃乱射事件を起こすのと同様に、本作を観たおっさんが変な気を起こして女子高生にアプローチをするのではないかと危惧しているのだろう。ただ私は、この作品を観たおっさんがそんな気を起こす可能性は低いと思っている。なぜならば、本作は厳密にいうと恋愛がテーマではないからだ。

恋は雨上がりのように」あらすじ・キャスト

主演は小松菜奈大泉洋。登場人物はそれほど多くないが演じている俳優たちはそれなりに豪華。詳細はWikipediaを参照。

恋愛ではなく挫折からの再起を描いている作品

正直なところ、私自身も原作は未読でアニメはチラ見程度の知識で本作を観た。観るまでは恋愛映画だと思っていたし、そうだとしても予告編の雰囲気が良かったので観ることに決めた。そして、その予想はいい意味で裏切られる。序盤こそ、小松菜奈演じる主人公の女子高生が大泉洋演じるファミレス店長に片思いしている展開で物語が進むが、中盤からはその要素は徐々に薄れていく。実際に作品を観て欲しいので詳しい説明は省くが、物語の本質としては、夢に挫折した主人公と店長が、交流を通して再び夢に向かって一歩を踏み出そうとするものであり、ただの恋愛ではない。

勘違いされやすい原因ももちろんある。年に必ず数本ある、女子高生向けの漫画原作のあま〜い恋愛映画がその一つ。もちろんそれを楽しみにしているファンがいるのは承知しているが、売り出したい俳優をメインキャストにすえるのが目的なんじゃないか?と思っても仕方がないほどに演技力よりもキャストの将来性重視で配役されている作品が多い。それも恋愛映画で顕著に見られる傾向だ。これまでに刷り込まれている恋愛映画=勢い任せの駄作ばかりという先入観が決めつけに拍車をかける。

もう一つの理由、これは時期が悪かったとしか言えないのだが、とあるアイドルグループの某メンバーが起こした不祥事だ。芸能界でおじさんが女子高生に手を出したというセンセーショナルな話題が、同じ構図である本作品の動員になんらかのよろしくない影響を与えたのはまず間違いない。本作が素晴らしい作品だからこそ、それは誤解だと宣言したい。

小松菜奈大泉洋だからこその雰囲気

キャスティングもハマっている本作。主人公の橘あきら役を小松菜奈、あきらのバイト先のファミレス店長の近藤正己役を大泉洋がそれぞれ演じているわけだが、正直他のキャスティングは考えられない。小松菜奈に関しては透明感や見た目、話し掛けにくい雰囲気などまさしく橘あきらそのものだ。近藤も大泉洋でよかった。原作に似せるのであれば堤真一など議論の余地はありそうだが、実際観てみると大泉洋だからこそシリアスとコメディがいい感じでバランスが取れていて、それでいていやらしくなく仕上がっている。

これが仮に阿部サダヲだったとしよう。悪くはない、悪くはないのだが原作のイメージとは少し違う。堤真一だった場合には、パッと見では似ているようではあるが少しダンディなのだ。とはいえ近藤役に関しては、そもそもにして私自身大泉洋が大好きだからという贔屓目の主観でしかない部分もあると思うが、あきら役に関しては小松菜奈以外考えられない。

主題歌の「フロントメモリー」による相乗効果

鈴木瑛美子×亀田誠治による主題歌「フロントメモリー」。この曲の爽快感と疾走感が映画とベストマッチしており、作品のクオリティをさらにひとつ上げていると思う。原曲は神聖かまってちゃんのボーカルの子がエモーショナルに歌っているが、本作の主題歌は鈴木瑛美子が歌っているのでそれとはアレンジも歌い方も異なる。原曲に比べて淡々と歌い、大サビの「頑張れないよ!!」のところだけまるでこれまで内に秘めていた気持ちを爆発させるかのように張り上げる。原作であきらがこの曲を聞いているシーンがあり、それが主題歌になるきっかけだとかなんとか。詳しいことは私にはわからない。

最高のラストシーン

どのようなラストシーンだったのか、詳細はここでは伏せようと思う。しっかりとその目で観てほしいから。実際観てみたら「あれ?これだけ?」と思われてしまう可能性もあるが、私にとってはこの上ないラストシーンだった。小松菜奈の表情がすべてを物語っている。あの表情だけで、これまでの出来事にもこの先待ち受けているであろう未来に対しても「よかった」と素直に感じた。

ツイッターでもつぶやいたが、このラストシーンの小松菜奈の表情の動きは、ブラッド・ピット主演映画セブンのラストシーンでのブラッド・ピットの表情の動きに匹敵するほど素晴らしいものだった。ほんの一瞬で様々な感情が頭の中を駆け巡るが、こみ上げる本音の部分の気持ちを飲み込みつつそれでいて素直な気持ちを口にする。とにかく一度観てほしい。

要するに観て!!

これまで長ったらしく色々と生意気に書いてきたが、この記事を読んでくれた人に伝えたいのは、まだ観てないなら観て!ってこと。2018年11月21日にBlu-rayが発売されるから、オンデマンドでもレンタルでもいいからぜひ一度観てもらいたい。邦画としてはここ最近ではダントツに素敵な作品と感じたから、そんな素晴らしい作品を観ないままでいるのはもったいない。観たけどつまらなかった、そう感じたなら申し訳ないが少なくとも時間の無駄だったなんてことにはならないと保証する。若い人よりも、大人になって社会の荒波に揉まれる中で何かしらの挫折を味わった人にこそ響くはず。私がそうだったから。